2021/06/01

【花便り210601】梅雨時の花-アジサイ

「迷うあじさい 七色変わる 色が定まりゃ 花が散る」―気象キャスターの草分けとなった故・倉嶋厚氏のエッセイの中の一節ですが、何やら意味深のことを謡っています。それはともかく、今の季節あちこちの家庭や公園に咲いているアジサイは、土質つまり環境によって花の色が変化することがよく知られており、「しちへんぐさ」などと呼ばれ、中国でもこの花を「七変化」と表現するそうです。また、詩歌の世界では「紫陽花」と書いてあじさいと読ませることが多いようですが、これは唐代の詩人・白居易が中国産の紫色をした別の花(ライラック?)をこう呼んだことに由来し、アジサイそのものは純日本産の花と言われています。 さらに幕末にシーボルトが持ち帰った日本産のアジサイに、otakusaという種名をつけてヨーロッパに紹介したこともよく知られるところです。この花は長崎出島の植物園で栽培されていた園芸品種で、シーボルトは当初「ソノギ」と呼んでいた花を、その後「オタクサ」に変えたようです。種名の意味について長い間謎でしたが、大正時代末になって、シーボルトの愛人の名前「お滝さん」(本名・楠本滝)のことであり、ソノギは彼女が長崎丸山の遊女だったときの源氏名「其扇」に由来していたことが、シーボルト研究者によって明らかにされました。それを知った植物学者の牧野富太郎は「・・・此ノ清浄ナ花ハ長ヘニ糞汁ニ汚サレテシマッタ、アア可哀想ナ我ガあぢさゐヨ」と『植物研究雑誌』(第4巻2号、昭和2年)に書いています。何もそこまで言わなくても、と思うのですが・・・。アジサイの学名は、リンネの弟子でシーボルトより50年近く前に医師として長崎にやってきたカール・ツンベルグが名付けたHydrangea macrophyllaに先取権があり、H.otakusaは現在は使われていません。アジサイは花色ばかりでなく名前も七変化するようです。 現在でも広く栽培されている手鞠咲きのアジサイ(ホンアジサイ)は南関東に自生するガクアジサイからかなり古くに作出されたもので、装飾花だけからなる種無し品種です。アジサイはおよそ500種もの栽培品種があり、近年では、出雲地方で作出された「万華鏡」という八重咲きの品種が人気だそうです。我が家の庭にもホンアジサイと出自の解らない「万華鏡」に似たアジサイが梅雨時の庭に彩りを添えています。

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【花便り220601】

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